選択的夫婦別姓に反対する理由その③スウェーデンに見る家族の絆の崩壊

選択的夫婦別姓に反対する理由その③スウェーデンに見る家族の絆の崩壊
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選択的夫婦別姓に反対する理由の第三弾です。

前回までで選択的夫婦別姓は「改姓に伴う不便不都合の解消手段にならない」事を論じて来ましたが、今回は夫婦別姓反対派が大きく主張する「家族の絆」の問題について考えていきます。

「家族の絆」とは極めて主観的な問題であり、自民党法務部会では「神学論争」などと一蹴されましたが、そういう唯物論的な考え方こそが社会的混乱を増大してきた歴史を見てみましょう!

前回までの記事

多くの国は選択的夫婦別姓という誤解

「法律で婚姻後の氏を同一にしなければならないと規定している」と限定すれば日本だけかも知れませんが、アイスランドやインドネシアのようにそもそも名字が無い国もあるし、韓国のように夫婦別姓が基本の国もあります。

また夫婦別姓を選択できる国であっても、実は「フルスペックの完全自由選択」ではなく、「夫婦同姓を原則とするが例外的に夫婦別姓も認める」という国のほうが、圧倒的に多いようです。

原則・例外なしの選択的夫婦別姓はスウェーデンなどごく少数

例えばドイツでは1900年発効となった民法典により、夫婦は夫の姓を共通の家族姓する事が定められ、その後1977年に妻の姓も家族姓として選択可能に。夫婦別姓が認められたのは1993年ですが、「家族の姓を夫婦で合意できない場合」の例外として認められているに過ぎません。

またフランスは法的には結婚によって姓を変える規定が無いものの、「妻は夫の姓を名乗る権利を有する」と認めることで夫婦同姓の慣習と法律の辻褄を合わせています。最近は女性の社会進出によって結婚前の姓を名乗る女性も増えているそうですが、これは「選択的夫婦別姓」とは違うでしょう。

このように夫婦別姓とは言っても国ごとに様々な違いがあり、日本の法務省が作成した選択的夫婦別姓案のような「原則も例外もなくフルスペックの完全自由選択」は、世界的にも極めて稀です。

そしてその「原則も例外もなくフルスペックの完全自由選択」を取っている数少ない国が、スウェーデンです。

参照:http://www.seisaku-center.net/node/266

スウェーデンの家族観の変化

フルスペックの完全自由選択な選択的夫婦別姓を認めているスウェーデンについて興味が深まったので、その家族に対する影響を調べてみました。

スウェーデンについて調べれば調べるほど、夫婦別姓によって家族観に変化があったのではなく、第二次大戦後の高度成長にともなって家族観も大きく変化し、それに追随する形で夫婦別姓制度も導入された事がわかります。

スウェーデンは元々北欧の農業小国でしたが、第二次大戦後で中立を保った事により戦災を免れ、戦後の復興特需に乗っかって重工業や鉄鋼輸出などが飛躍的に成長しました。この経済成長に伴って、女性の社会進出が進み、経済的に自立した男女は伝統的な結婚に大きなメリットを感じなくなっていったのです。

※余談ですが第二次大戦でスウェーデンが中立を守った件で、「平和主義を貫いて素晴らしい」などと称賛する向きもありますが全く的はずれです。スウェーデンはナチスに平伏してドイツ軍の領域内通過を認めており、鉄鋼や石炭をドイツに輸出するなど重大な中立違反を繰り返しています。
また戦況が連合軍優位に傾くと、今度は連合軍に空軍基地を提供して実質参戦しているんですね。要するに強い方に阿って勘弁してもらっただけで、さらには戦略的要衝でも無いので侵攻を免れただけです。
同じく参戦意志の無かったデンマークやノルウェーは、北海の制海権争いに不可欠であったため問答無用でナチスに蹂躙されています。

夫婦別姓・サムボ法によりひとり親が急増

スウェーデンでは戦後の復興需要と世界的な好景気に便乗し、60年代~80年代にかけて目覚ましい高度成長を成し遂げました。元々の小国が重工業での大発展を遂げれば、当然全産業が深刻な人手不足となり、男性だけでなく女性も働くことが求められます。

そのような環境で女性も経済的に自立していき、伝統的な「男が外で働き女が家を守る」というライフスタイルが崩壊していきます。そして経済的に自立した女性は男性の庇護下に入る必要がなくなり、結婚の形が変化していきました。

その象徴が1983年の選択的夫婦別姓容認ですが、その前から法律婚をしない「事実婚」が急増しています。1976年の「親子法」で法律婚した夫婦の子供と婚外子の法的差異が全くなくなり、1988年の「サムボ法」で法律婚と事実婚の差異がほとんどなくなりました。

かくして法律的に結婚しない事実婚カップル(サムボ)が急増し、2016年におけるスウェーデンの婚外子割合は54%に達しています。スウェーデン女性の平均初産年齢は29.2歳で、平均初婚年齢の33.2歳を大きく下回っているんですね。

スウェーデンは離婚率65%という数字も話題になりますが、そもそも結婚しないで事実婚のまま子供を作って、家族として暮らしたり離れたりを繰り返している訳ですね。夫婦別姓だけが焦点ではなく、そもそもの家族観が日本と大きく違うことがわかります。

【参照】
https://gigazine.net/news/20180702-women-kids-developed-nations/

http://honkawa2.sakura.ne.jp/1520.html

ひとり親家庭の子どもの貧困が増加

男も女も家庭の責任から解放され自由に振る舞うようになれば、そのしわ寄せは子供にきます。

セイブ・ザ・チルドレン・スウェーデンのレポートによると、2008年には22万人の子どもたちが貧困家庭で暮らしており、この割合は年々増加しているそうです。また、ひとり親家庭の子どもの貧困率は24.7%で、両親がいる家庭の子ども(8.1%)より、3倍以上も高かったとの事。

女性の社会進出が進むのは良いことのように思えますが、実態としては「男一人の稼ぎでは暮らせないから共働きせざるを得ない」ケースが大半で、そのような社会でひとり親家庭が困窮するのは自明の理です。

共働きをしても世帯年収が単純に二倍にならないのは、実は労働者の賃金を押し下げたい大企業側の思惑が多分に影響しているでしょう。

参照:https://www.jlgc.org.uk/jp/research/eu_local_autonomy_info/local_sweden/sweden_local_autonomy_memo/%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3%E3%81%A7%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AE%E8%B2%A7%E5%9B%B0%E3%81%8C%E5%A2%97%E5%8A%A0/https://www.jlgc.org.uk/jp/research/eu_local_autonomy_info/

異常な少年犯罪の増加

スウェーデンの犯罪統計を見ていると、1960年代以降大きく上昇していることがわかります。ただし1965年に司法制度の大きな変革があり、この時代の異常な上昇は統計方法の変更による影響が大きいと言われています。

問題は、1970年代後半から80年代に掛けての伸びです。創価大学文学部教授の内藤洋子氏によると、この時代のスウェーデンの犯罪の大きな特徴として加害者が相対的に若く、15~19歳が最多で、20~24歳が次に多いそうです。
犯罪加害者の属性として最も大きいのが10代の少年という社会は、どう考えても健全ではないでしょう。

スウェーデンの高度成長と家族観の変遷の影には、少年犯罪の異常な増加があります。家族観の変化が子どもたちの非行を増加させた可能性は高く、大きな社会的混乱を起こしているのがわかりますね。

ソ連における事実婚・夫婦別姓政策

選択的夫婦別姓への反対派がよく持ち出す事例に、旧ソ連での家族政策の大失敗があります。

ソ連は共産主義的唯物論に基づき、「家族の絆」などというのは非合理的な幻想であるとして、家族制度の大改革を行いました。夫婦別姓制度はもちろん、女性も労働に参加させて経済的にも男性との完全な平等を目指しました。
そして男も女も「家族」という責任から解放し、結婚と離婚のハードルを極限まで下げて、フリーセックスで子どもを「産めよ増やせよ」の大号令を掛けたわけですね。

この結果一時的には出生率の大幅な増加に成功したものの、生まれた子どもは荒廃した家庭で非行に走り、離婚してシングルマザーとなった女性たちは貧困化して悲惨な末路を迎えました。
「姓の解放」「結婚の無意味化」を極限まで進めた結果、ソ連では重大な倫理的頽廃を引き起こし、ついには1936年から始まる「揺り戻し政策」によって伝統的な家族の大切さを説かざるを得なくなったのです。

この件は「夫婦別姓反対論」として持ち上げられる事が多いですが、そもそもソ連の家族解体政策の一環として夫婦別姓があっただけで、決して夫婦別姓がすべての原因ではありません。

ソ連でもやはり「伝統的な家族観の衰退」の一事例として「夫婦別姓」があり、夫婦別姓にしたから社会の大混乱が起きたとは言えないでしょう。しかし「伝統的な家族観の衰退」と「夫婦別姓」、そして「社会の大混乱」が密接に関係しているのは事実なのです。

参照:https://www.epochtimes.jp/p/2017/04/27147.html

夫婦別姓は伝統的な家族観の崩壊と混乱を助長するだけでは

  • 夫婦別姓は国によって様々な形がある
  • 伝統的な家族観の衰退に伴い夫婦別姓が出現する
  • 伝統的な家族観の衰退によって社会的混乱が増大する

選択的夫婦別姓を強く求める方(特に女性)の意見を見ていると、「私は改姓するのに男は何もしなくていい不公平感に耐えられない」という感情が大きいように思います。

しかし私も男ですが、本来男の方こそ「改姓してまで家族になってくれた相手に対する責任感」を重大すぎるほど重大に捉えるべきで、そのような覚悟と責任感の無い者は結婚する資格が無いとすら思いますね。

結局の所、近代化と工業化、唯物論的な思考の広がりによって人々が様々な「責任」からの解放を求めたことが、伝統的な家族観の衰退を招いたのだと思います。そして男女ともに責任からの解放を求めた結果、「改姓」をする女は「男は改姓しない」という外見だけを持って不公平感を感じてしまうのでしょう。

30年議論しても選択的夫婦別姓のメリットが「選択性なんだから自由にさせろ」しか出てこない事からも、この議論が「責任・しがらみからの解放」を求める争いである事がよくわかります。

つまり根本的な問題は人々が責任からの解放を求めすぎた事であり、夫婦の姓、家族の姓はその結果でしかありません。保守思考をもつ私が提示する解決策は、伝統的な家族観の復活と再評価です。

男女ともに、「改姓してでも一緒になりたい」「改姓してでも一緒になってくれた」相手に対する責任を持ち、それが相手に「愛情・絆」として伝わることが、このような不公平感を感じなくて済む方法なのです。事実、私の妻はこんな不公平感を感じたことは一度もないと言います。

伝統的な家族観が衰退し、人々が責任から逃れようとする中で生じた不公平感を、さらに責任からの解放を大きくする事で解決できるでしょうか?それでは逆に社会的混乱と不公平感を増大するだけであり、互いに責任を負わない人同士の骨肉の闘いが繰り返されるだけだと思います。

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プロフィール

tetsuya

tetsuya

1984年神奈川県生まれ

一条工務店でマイホーム作りをスタート!
スキューバダイビング、カメラ、登山、スノーボードなどアウトドアマンでもあります。

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